人生が変わるきっかけはすぐそこにある

映画、音楽、本、旅行などの感想等を中心に書きます。雑記ブログです。

映画鑑賞記「ガープの世界」

 


【作品情報】

原題:「ガープの世界」(原題:The World According to Garp)

 

制作国:アメリカ合衆国

 

制作年:1982年

 

上映時間:136分

 

原作:ジョン・アーヴィング

  「ガープの世界

 

監督:ジョージ・ロイ・ヒル

 

出演者:ロビン・ウィリアムズ

    グレン・クローズ

    ジョン・リスゴー

    メアリー・ベス・ハート 他

    

 

【あらすじ】

 1944年、看護婦のジェニー・フィールズは一人の子供を出産する。名前は「T.S.ガープ」である。ジェニーは、子供は欲しいが結婚はしたくない、夫は欲しくないという考えを持っていた。ある時彼女の働く病院に、戦争で負傷した「ガープ三等曹長」という兵士が送られてきた。彼は重傷を負い死期が迫っていたが、性器だけは常に勃起していた。結婚せずに子供を設けるチャンスはここしかないと思った彼女は、「ガープ三等曹長」の上に「またがり」妊娠する。その後「ガープ三等曹長」は死亡し、代わりに生まれたのが「T.S.ガープ」だった。

 ガープは空想好きの少年として元気に成長していった。学生時代にはレスリングに夢中になり、小説を書き始め、エレンというレスリングコーチの娘と出会う。そんな中、ジェニーは「性の容疑者」という、彼女の自伝を出版する。その本はたちまちベストセラーとなり、アメリカ中のフェミニストたちの中心的存在になっていく。作家となったガープはエレンと結婚し、一家には2人の子供が生まれ、ロバータという女性に性転換した一家のよき理解者にも恵まれる。

 しかしそんな幸せな彼らにも様々な出来事や災難が訪れる。ガープとその周囲の人間の数奇な半生を描いた物語。

 


www.youtube.com

 


www.youtube.com

 

 

【感想】(ネタバレあり)

 ジョン・アーヴィングのベストセラー「ガープの世界」の映像化作品。監督は「明日に向かって撃て」や「スティング」などで有名なジョージ・ロイ・ヒルです。この小説は、その構成や物語の内容からも「たった数時間の映画にするのは不可能」と言われていた作品でしたが、たくさんの登場人物の成長や変化、成功や失敗、挫折などがとても丁寧に描かれています。ロビン・ウィリアムズはこの作品がスターとしての地位を不動のものにしました。

 まず「ガープの世界」には、原作ジョン・アーヴィングの半生ともいえるべきたくさんの要素がちりばめられています。レスリング・熊・小説・レイプ・フェミニズム等々。彼の小説には、ほかの作品でもこれらの話題が出てくることが多く、作家としての重要なテーマとなっています。ある意味重たく深い内容でもありますが、映画自体は重くなりすぎず、軽やかに進んでいきます。

 人間生きていれば様々な失敗や苦しみを経験しますが、それと同じように楽しいこと嬉しいこともたくさんやってきます。人間である以上、生まれ、成長し、年を取り、死に向かっていく事は間違いありませんがそんなことを再認識させてくれる内容です。

 物語はジェニーの家の海岸で生まれたばかりのガープが、高い高いで空中に投げられているシーンから始まります。ここで流れている音楽はビートルズの「When I'm Sixty-Four」。64歳になっても一緒にいてくれるかい?と歌っているこの曲はガープのこれからの人生を実によく表していると思います。そして画面いっぱいに映し出されるこの赤ちゃんは「おちん○○」丸出しの裸なんですよね。このシーンは物語の最後にも映し出されておりとても印象に残る重要なシーンとなってます。

 作中では登場人物たちに沢山の悲劇や出来事が訪れます。ガープの母親に対する葛藤、ガープとベビーシッターの浮気、ヘレンの浮気、息子ウォルトの死、ジェニーの暗殺、傷ついた女性たち。人生は因果応報、いいことも悪いこともやったことは自分の身に帰って来る。痛烈にそう感じる事が出来ます。この登場人物たちはみんな傷つきいろいろなことに葛藤しますが、それを乗り越えようとし乗り越えていくところが見どころですね。

 なんたってヘレンは浮気、別れたくないといった相手が家まで来るんです。帰りたがらない彼を帰らせ、関係を終わらせるために車の中で彼のものを咥えているところに、子供たちを乗せたガープの車が追突します。この事故でガープもヘレンも重傷を負い、浮気相手の一物は嚙み切られてしまい、ウォルトは亡くなってしましますこんな悲劇がありますか?僕なら一生立ち直れないと思う。でもみんな時間をかけてでもゆっくりと立ち直っていくんですね。

 立ち直る事が出来ずヘレンにつらく当たるガープにジェニーはこう言います。「あんたの態度は間違っている。あなたは看護婦の息子よ。自分で自分を治しなさい」と。怒るわけでもなく説教するわけでもない。素晴らしい母親ですね。

 もう一人の重要人物は性転換した、元フットボール選手のロバータです。彼女はガープの家族やジェニーのよき理解者であり支え役です。彼女は性転換した人物として、様々な嫌がらせや脅迫を受けていますが、挫けることもなく前向きに人生を生きています。体格が大きくがっちりしたジョン・リスゴーが、元フットボール選手にぴったりですね。作中でも公開当時でも、LGBTというものが今よりも理解のなかった時代です。そういう意味でも時代を先取りした作品と言えますね。

 

ガープの世界」 [画像ギャラリー 12/15] - 映画ナタリー

 

 人生は楽しいことばかりではないが、辛く苦しいことばかりでもない。そんなことを考えさせられる映画でした。僕も調子の波が結構激しい方なんですが、前を向いて生きていきたいものですね。

今は亡きロビン・ウィリアムズの笑顔もすごく良いです。

 

ジェニー「人生って素晴らしいものよ」