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映画鑑賞記「サイダー・ハウス・ルール」

サイダーハウス・ルール(洋画 / 1999)の動画視聴 | U-NEXT 31 ...

 

原題:「サイダー・ハウス・ルール」(原題:The Cider House Rules)

 

制作国:アメリカ合衆国

 

制作年:1999年

 

上映時間:131分

 

原作:ジョン・アーヴィング

  「サイダー・ハウス・ルール」

 

監督:ラッセ・ハルストレム

 

出演者:トビー・マグワイア

    マイケル・ケイン

    シャーリーズ・セロン

    ジェーン・アレクサンダー

    デルロイ・リンドー 他

 

【あらすじ】

 1943年、セントクラウズという孤児院で育った少年ホーマー・ウェルズ。セントクラウズではラーチ医師の元、当時のアメリカでは違法であった人工妊娠中絶手術も行っていた。ラーチはホーマーに中絶をはじめとした医療技術を教えていくが、ホーマーは、医者になる事を頑なに拒んでいた。彼は他の事で人の役に立ちたい、自分には他の道があると思っていたのだ。

 そんなある日、彼はセントクラウズに中絶手術のために訪れた軍人のウォリーと恋人のキャンディに出会う。手術は無事終了するが、ホーマーは彼らに僕もここから一緒に連れて行ってほしいと頼み、彼らは快諾する。そして彼はセントクラウズを後にする事になり、初めて孤児院以の世界を目にするのだった。

 ホーマーは、ウォリーの家が経営するリンゴ園で働き始める。そのリンゴ園には黒人の季節労働者ローズたちが働いていた。ホーマーは彼らにリンゴ園での仕事を教わり始め、彼らと一緒に生活をする事になる。彼らの暮らすリンゴ園の小屋(サイダーハウス)にはある規則を書いた紙が貼ってあった。

 そんな中ウォリーは戦地へ赴き、ホーマーとキャンディは関係を深めていく・・・

 

 


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【感想】(ネタバレあり)

 現代アメリカ文学を代表するジョン・アーヴィング原作の作品です。ジョン・アーヴィング原作で映像化された作品は他にも「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」「サイモンバーチ」などが有名です。

 人には誰しも、生まれながらに求められている役割や仕事があるんでしょうか。そんなことを考えさせられました。そしてそれこそがこの映画のテーマであるように思います。

 ホーマーは生まれも育ちも孤児院、そして心臓に病気を抱えています。そのため戦時中にもかかわらず、徴兵されることもありませんでした。

 彼の育った孤児院にはたくさんの女性がやってきます。その女性たちは望まぬ妊娠をしており、中絶手術をするためにやってきています。医師のラーチは、中絶とは女性を救うための一つの方法であると信じていますが、ホーマーはその仕事をするのが嫌でたまりません。作中では中絶し、子宮から掻き出した子供を焼却炉で燃やすシーンも描かれています。

 子供のころから、それを目にし手伝ってきたホーマーが嫌がるのも納得です。しかしラーチは、ホーマーは医師として人を救うことが彼の仕事だと考えています。彼の事を理解し、想っているからこそ医師になってほしいと考えているんですね。

 そんな中、孤児院に中絶の手術をするためにやってきたウォリーとキャンディ。医師としては若すぎるホーマーを見て2人は不安を感じますが手術は無事成功します。そしてホーマーは2人に頼みます。「僕も一緒に連れて行ってくれないか。」

 ホーマーにとっては二度とないチャンスだったのでしょう。このチャンスを逃すまいと。孤児院から出ていけるのは今しかないと。こんなチャンスをみすみす見逃すことはできないですよね。

 当然医師のラーチや孤児院の子供たちは悲しみます。ある子供がホーマーに「ずるいよ」という言葉が印象的です。しかし彼は「ごめんよ」といって旅立っていきます。

 そしてホーマーが目にする、初めての孤児院の外の世界。海やリンゴ園や、ドライブインシアター。キャンディとの恋。そのどれもが、色鮮やかに美しく描かれています。

 主題の「サイダー・ハウス・ルール」。これはホーマーが黒人の労働者たちと寝泊まりするリンゴ園の小屋に貼ってあった規則です。しかし字の読めない黒人たちはホーマーに教えられるまでこの張り紙の内容を知りませんでした。内容は「ベッドでタバコを吸ってはいけない」とか「屋根に上ってはいけないとか」大したことではありませんでした。ここには色々な解釈をとることができると思います。 

 僕は「規則がすべてではない」、そういうことなんじゃないかと思います。違法でも女性を助けようとするラーチ、規則なんて知らなくてもうまくやってきた労働者たち、そして自分に必要とされる仕事を理解しメスをとるホーマー。たくさんの場面にこの意味がちりばめられているように感じます。

 人工妊娠中絶や近親相姦など、決して軽いとはいえない内容を扱っていますが、重苦しくはなく、肩肘張らずに見ることができると思います。

 そして、ホーマーとキャンディとの束の間の恋。好青年全開のトビーマグワイアと、とにかく美しいシャーリズセロンの恋は素敵でもあり、かなり切ないです。

 ホーマーは結局キャンディのもとを去り、孤児院へ戻る道を選びますが、孤児院で彼は自分が心臓の病気を患っていなかったことを知ります。亡くなってしまったラーチがホーマーを戦争に行かせないための嘘だったのです(ラーチはホーマーがリンゴ園で働いている間に亡くなってしまいます)。ラーチは「ホーマーが戦争へ行ってしまったら自分の心臓こそ耐えられない」と言っていたのです。

 そしてホーマーは自分がラーチの跡を継いでいく事を決意し、子供たちにラーチと同じ「おやすみの挨拶」を言うところで物語は幕を閉じます。

 「おやすみ、メインの王子たち、ニューイングランドの王たち」

 自分の人生とは何か、自分の仕事は何なのか、そして自分のことを本当に気にかけて愛してくれるのは誰なのか。そんなことを考えさせられる映画です。

 ぜひ自分の大切に思う人と見てほしい1本です。

 同名の原作「サイダー・ハウス・ルール」は内容が少し違いますがこちらもおすすめなのでぜひ読んでみてください。こちらの方も今度ブログに挙げてみたいと思います。